ギリシア神話

Sociology by Robert von Ranke Graves

Blurb

『ギリシア神話』は、詩人・文学者ロバート・グレーヴスによるギリシア神話の概説書である。
個々の神話は、まず古典史料の引用をふくめプルタルコスやパウサニアスといった著述家の証言のもとに提示される。続いて、起源とその意味についての、グレーヴス的な意味での解釈が行なわれる。
グレーヴスは、まず、青銅器時代のギリシア地方をペラスゴイ人の母権制社会からギリシア語を話す人々による持続的圧力のもと母系制・父権制社会へと変容していく時代であると考えた。第二段階においては、土地代々の女王によって統治されている居住地へと地方の王たちが異国の王子として来訪し、限られた期間内に次の王によって儀礼的に殺された。王たちは生贄の代理を立てるなどして供犠をなんとかして回避して期間を延ばし延ばしにした。結果として女神の祭司たる女王は従属する貞節な妻へと変貌した。第三段階においては嫡男が統治を次ぐことになった。
『ギリシア神話』においては、神話は上記の全三段階の儀礼に由来する物語として、またギリシア人の王と月-女祭司との争いに関する歴史の記録として提示された。場合によっては、グレーヴスは、元来母権的・母系的だった時代の仮説的な信仰が後代のギリシア人によって父権的に誤解されてしまったというアイコノトロピー、というか後世に神話図像を誤解釈するというプロセスをも思い描いていた。だから、たとえば馬の女神の胎内において争う神的双子のイメージは、後世トロイアの木馬神話を生み出したのだと推測した。
以上の歴史観は、J・J・バッハオーフェンの影響が顕著である。

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