ヨセフとその兄弟

fiction by トーマス・マン

Blurb

『ヨセフとその兄弟』は、トーマス・マンの小説。旧約聖書のヨセフの物語を大長編に仕立てた作品で、『ヤコブ物語』『若いヨセフ』『エジプトのヨセフ』『養う人ヨセフ』の4部からなる。ナチス政権下のドイツからの亡命をはさみ、18年にわたって書き継がれた。ヨセフとその父ヤコブの関係を軸に、フロイト心理学を援用しながら人類の和解とヒューマニズムの主題を扱っており、背景にはナチスの思想、特にローゼンベルクの『二十世紀の神話』に抗する意図があった。
着想は1923年までさかのぼり、この年の冬に知り合いの画家へルマン・エーバースから、ヨセフを題材にした画集に短文をつけるよう依頼されたことがそのきっかけであった。依頼された晩、すでに幼い頃から親しんでいたヨセフの物語を読んで心を動かされるとともに、ゲーテが自伝『詩と真実』の一節でこの物語に触れ、あまりに短すぎるが、だからこそ細部を補うという誘惑に駆られる、といったことを書いていたのを思い出した。1925年3月にはエジプト・地中海旅行も行い、神話学、古代史、宗教史の資料を読み込み綿密な下準備をしたうえで1926年12月に執筆が開始された。1933年3月にはナチスに押収されたミュンヘンの自宅から、娘エーリカが『ヨセフ』の原稿を命がけで救い出している。第四部執筆開始までの中断期には『ワイマルのロッテ』を書き上げており、最後の第四部はマンのアメリカ亡命の間、スウェーデンに亡命していたフィッシャー社から刊行された。

First Published

1948

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